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主な研究プロジェクト

慢性腎臓病患者における動的バランス能力と
ロコモティブシンドローム・サルコペニアとの関連

慢性腎臓病患者における
動的バランス能力と
ロコモティブシンドローム・
サルコペニアとの関連

研究の概要

慢性腎臓病(CKD)患者では、ロコモティブシンドローム(ロコモ)やサルコペニアの発症によりCKDが重症化し、末期腎不全や透析導入へ進行するリスクが高くなります。しかし、CKD患者のロコモ・サルコペニアの該当状況は不明であり、運動機能に関しても十分に検討されていません。

私たちは、これまでに自治体と連携し、地域の自立高齢者を対象にロコモと動的バランス能力の関連について研究を進めてまいりました。
結果として、交互に片脚立ちを繰り返す運動(動的バランス課題)における骨盤の前後傾及び側方傾斜の角速度の自己相関係数が高い人ほど動作の安定性にすぐれ、これらの指標を用いてロコモを判別できる可能性が示唆されました。

しかし、研究対象者の運動機能の偏りなどの理由により、この方法によるロコモの判別精度はまだ実用化レベルには達していない状況です。

本研究では、大阪大学医学部付属病院腎臓内科(予定)と連携の下、上記の動的バランス課題を用いて実用化に耐えうるロコモ・サルコペニアの判別モデルを構築することを目的とします。
当初の研究計画では、運動機能の低い高齢CKD患者180名を対象にロコモ度テストとサルコペニア診断、動的バランステストを実施する予定でした。しかし、現在新型コロナウィルスの感染拡大の影響により研究計画は大幅に遅延している状況です。

本研究によりCKD高齢者に対する安全で簡便なロコモ・サルコペニアの判別方法が確立すれば、リスクに応じた適切な予防策を講じることが可能となり、CKDの重症化予防や透析導入の抑制などの効果が期待できます。

本研究は、CKD患者の動的バランス能力とロコモ・サルコペニアの該当状況の実態を明らかにする本邦初の研究であり、透析導入の進行抑制を目標に掲げるわが国の施策を推進する重要な研究課題であるといえます。

ロコモ・サルコペニア発症による慢性腎臓病(CKD)の重症化

慢性腎臓病(CKD)患者は、蛋白質摂取制限や日常生活の活動制限によってロコモティブシンドローム(ロコモ)やサルコペニアを発症しやすい状態と考えられます。
ロコモやサルコペニアによってCKDが重症化すると末期腎不全や透析導入へ進行するリスクが高くなります。

また、インスリンの排泄が遅延することによって低血糖になりやすく、転倒のリスクが高まります。このように、CKD患者にとってロコモ・サルコペニアの予防は生命予後に関わる重要な課題ですが、その実態は不明であり、運動機能に関しても十分に検討されているとは言い難い状況です。

動的バランステストを用いたロコモ・サルコペニアの判別

私たちは、これまでに自治体と連携し、地域の自立高齢者を対象にロコモと動的バランス能力の関連について研究を進めてまいりました。
結果として、片脚を一定リズムで挙上する運動課題において加速度センサーにより取得した腰部の加速度・角速度波形を1歩行周期ずらした時の一致率によって動的バランス能力を評価する方法を確立しました。

具体的には、2.66秒間隔で交互に片脚立ちを繰り返す運動課題における骨盤の前後傾及び側方傾斜の角速度の532次の自己相関係数が高い人ほど動的バランス能力が高く、これらを独立変数とするロジスティック回帰モデルによりロコモを判別できる可能性が示唆されました。
(詳細は  「ロコモティブシンドロームとサルコペニア判別のための新規な動的バランス指標の開発」 ページを参照)

しかし、このモデルによるロコモの判別精度は、まだ実用化レベルには達していない状況であり、サルコペニアの判別に関しては例数不足により研究が進んでいない状況です。
この理由として、これまで研究に参加していただいた高齢者は概ね元気であり、運動機能の高い人が多かったため、データに偏りが生じてしまったことがあげられます。

よって、今後は運動機能の低い高齢者を対象に同様の測定を行い、データの偏りを修正することによりモデルの判別精度の改善に取り組みたいと考えています。

本研究の目的と進捗状況

本研究では、高齢者を対象に、交互片脚立ち課題における腰部の加速度情報をもとに作成した動的バランス指標を用いて、実用化に耐えうるロコモ・サルコペニアの判別モデルを構築することを目的とします。

この目的を達成するため当初の研究計画では、大阪大学医学部付属病院腎臓内科と連携を図り、運動機能の低い高齢CKD患者180名を対象にロコモ度テストとサルコペニア診断、動的バランステストを実施する予定でした。
しかし、2023年2月時点で、新型コロナウィルスの感染拡大の影響により研究計画は大幅に遅延している状況です。(2024年3月末まで研究期間の延長を申請中)

本研究により期待される成果

本研究によりCKD高齢者に対する安全で簡便なロコモ・サルコペニアの判別方法が確立すれば、これらのリスクに応じた適切な予防策を講じることが可能となり、CKDの重症化予防や透析導入の抑制などの効果が期待できます。
また、これまで不明だったCKD患者の動的バランス能力やロコモ・サルコペニアの該当状況の実態を明らかにすることで、CKD患者の運動機能の特性に合った適切な運動介入の方法を検討することができるようになります。

本研究は、CKD患者の動的バランス能力とロコモ・サルコペニアの該当状況の実態を明らかにする本邦初の研究であり、透析導入の進行抑制を目標に掲げるわが国の施策を推進する重要な研究課題であるといえます。